SRPGでのタンク職
1. 前置き
MagicScrollTacticsのリリースはPC、Switch、PS4とすでに一段落していて、今は次回作をちまちまと作っているところなのだけど、もうひとつやり残していることがある。ゲーム設計の際にどういう意図があったのかをテキストにしておくというものだ。今は頭の中に残っているものの、次回作ができてしまうとおそらく曖昧になるだろうし、そもそも書く動機が薄くなる(最新作のことについて書きたくなるもんだし)。つまり今のうちにやっておくべきことだろう。
ということで、企画というほどちゃんとした体裁ではないのだけど、つらつらとこんな感じの記事を何回か書くことになると思う。続くかどうかは謎です。
2. MSTのタンク職
2.1 モダンなゲーム
MSTはジャンルSRPGではあるものの、RPGの文法で作っている部分がある。特にバトルまわり。小さいマップでパーティが少ないのはそういうことである。
さて、RPGのバトル開発において、どうしたらモダンなものになるか?と考えたときに、MSTでの答えはロールの概念であり、ロールって何かというと、DPSだとかヒーラーだとか、タンクだとかだ。
2.2 SRPGとタンクの相性の悪さ
タンク。困ったことに、実はSRPGとタンク職の相性はけっこう悪い。というのは、敵ユニットはAIで動くもので、AIというのは基本的にできるだけ賢くつくるものだからだ。固いユニットと柔らかいユニットが並んでいたらどちらを狙うか? 柔らかいほうに決まっている。しかし、タンク職は頑丈でなくてはならない。
頑丈なタンク職が敵から狙われるにはどうすればいいか。
ここで、SRPGだからといって位置の概念で解決するのは悪手だと思っている。確かに前線にタンクをおいて後ろに射撃部隊をおけば実現しそうだ。しかしそれをやるにはパラメータ調整にかなりの制限がかかる。敵の移動力は低くする、敵の射程は短くする、乱戦にはできない、味方の近接アタッカーは諦める…。
ついでに、ユニット位置や射程が重要になると、プレイが重くなるという問題がある。いちいちステータスウィンドウで移動力と射程をチェックして、という作業をプレイヤーが要求されるからだ。(射程計算をシンプルにしておく必要もある。移動後の攻撃射程は単純な足し算で済んでいるか?)
とまあ、位置調整によるアプローチが全くありえない訳ではないのだけど、かなりストイックなゲームになるだろうとは思う。それは今回やらない。
2.3 挑発スキル
結局、MSTではAIにバカになってもらうことで解決している。挑発スキルがそれだ。
挑発を使えば敵はこちらを狙う。理不尽極まりないが、ともかくそれで間違いなくタンク職は仕事をする。あとはスキル効果がどう途切れるかを設計すれば良い。
反省点として、MSTの挑発スキルはヘイト値とかはなく確実に吸えるのでちょっと極端に強すぎた感じもある。この辺はまあ次の課題なのだけど、わかりやすく強くないと使ってもらえないタイプのスキルではある、という事情もあり…。ちなみにラスボスの二回行動は強すぎる挑発スキルへの対策として(あわてて)組んだ。
(実はもうひとつ仕掛けはあって、モンスター系のAIは一番近いユニットを狙うようにできている。ただ近接系アタッカーはやっぱり狙われてしまうので、これだけでタンク運用は難しいと思う。ごま塩程度のもん)
2.4 とまあ
SRPGだからといってユニット位置で解決しようとしたり、AIにただ賢さを求めると、あんまりうまく回らないなあ、という部分。
こういうところは頭をゆるくして設計するのがよさそう。